パラサイト 性描写。 パラサイト 半地下の家族 : 映画評論・批評

『パラサイト』舞台挨拶に草なぎ剛が登壇 ポン・ジュノ&ソン・ガンホに韓国語でラブコール|Real Sound|リアルサウンド 映画部

パラサイト 性描写

カンヌ国際映画祭で、 パルムドールを受賞した 『パラサイト 半地下の家族』を観ました。 私が今までで一番衝撃を受けた映画は、 『時計じかけのオレンジ』だったのですが、 それを更新しました。 私史上、最高傑作です。 映像、脚本、音楽ともに、最高です。 また、私は『ジョーカー』について、 テーマ性は分かるが、エンタメとしていまいちで、中途半端な作品だと思っており、 いまひとつ、このトレンドを受容しきれないでいましたが、本作は別です。 最高です。 本稿は、この映画トレンドを踏まえつつ、 『パラサイト』の素晴らしさについて、 分析していきます。 めちゃくちゃ長いですが、 その分、主要論点はコンプリートしていると思います。 以下、ネタバレを含みますので、 ご注意ください。 さて、 パラサイトの素晴らしさについて、 3つに分けて説明します。 絵の素晴らしさ 2. 展開の素晴らしさ 3. ジョーカーは、前段を描ききっていないですが、パラサイトはそこまで描き切っている点で秀逸です。 それぞれ、 4人家族で下記の家族構成です。 金持ち ・父:IT企業社長。 イケメン ・母:美人。 家事が苦手 ・姉:可愛いJK。 勉強ができない。 ・弟:小学生。 芸術が好き。 貧乏 ・父:無職。 一応、車の運転が得意 ・母:無職。 一応、家事全般は得意。 ・兄:ニート。 一応、勉強は教えられる。 ・妹:ニート。 一応、デザインができる。 物語展開としては、 貧乏人の兄が金持ちのJKの家庭教師になります。 そこを切り口に、 ・貧乏人の妹が、金持ち弟の美術家庭教師に ・貧乏人の父が、金持ち父の専属運転手に ・貧乏人の母が、金持ち一家の家政婦に なっていきます。 そして、この金持ちには、 元々の家政婦がおりまして、 貧乏人一家は、この家政婦を追い出して、 母を金持ち一家の家政婦にします、 この元家政婦も、 物語のキーパーソンです。 言ってしまえば、 この映画は、2組の家族の話ではないのです。 実は、「3組」の家族の話なのです。 映画のポスターにある謎の足は、 「ほかに誰かいること」を示している訳ですが、この元家政婦の家族のことなのです。 この元家政婦には、夫がおりますが、 なんと、金持ち一家の地下室に住んでいます。 しかし、監禁されているのではなく、 借金取りから逃れるために、元家政婦がこの家に匿っているという話なのです。 この3組の家族が混ざることによって、 悲劇が生まれ、物語が加速していきます。 さて、前提整理はここまでにして、 映画の素晴らしさの分析に入りましょう。 絵の素晴らしさ この映画は、 絵として優れているのですが、 これには2つの要素がありますので、 それぞれ説明していきます。 綺麗な絵を見せる。 汚い絵を見せない。 1-A. 綺麗な絵を見せる この映画は、金持ち一家の豪邸内を中心に話が進むのですが、とにかく美しいです。 ぜひ写真や映像で見ていただきたいですが、 美術館のような豪邸です。 豪邸という映像コンテンツは、 その紹介だけで、TV番組が成り立つのが証左であるように、とにかく絵としての魅力があります。 また、 ソウルの貧民街の描き方も素晴らしく、 情景上、暗い絵になってしまう箇所で、 街灯の橙色がエモーショナルで、 ノスタルジックな絵を作り出しています。 とてもフォトジェニックで、 絵画として切り取ってもおかしくない、 非常に美しい絵面が続きます。 また、 スタンリー・キューブリックの作品のように、シンメトリーや光陰により、登場人物の関係性や心理状態をメタ的に伝えていました。 芸が細かいです。 あと、マジで地味なポイントですが、 金持ち母が超絶美人というのも効果的です。 絵持ち力が半端ないです。 1-B. 汚い絵を見せない 貧乏一家の住居は半地下にあります。 下水描写もありますが、全然汚くないです。 この描写であれば、 悲惨さを強調するために、 汚く描いてしまう場合もありますが、 本作では、必要最小限に抑えられています。 この点、同じ下水の描き方でも、 トレインスポッティングとは、 全く異なる思想を持った作品と言えます。 ほか、性行為や刺殺というシーンにおいても、絵として見るに耐えない描写は、 ほとんど描きません。 故に、不快感なく、 快適な状態で見れるのが、 この作品の魅力のひとつです。 ひとことでいうと、 重いテーマの割に見やすいのです。 下記のような、 監督の絵作りのポリシーが垣間見られる映画でした。 展開の素晴らしさ この映画は、展開も素晴らしく、 見てて飽きさせない仕組みになっています。 まず分かりやすいのは、 貧乏家族が金持ち家族に取り入っていくシーンです。 視聴者としても、 兄、妹が雇用された辺りから、 次は、父と母だなと予測できるので、 父と母をどう入れ込むか?という物語展開を予想した上で、楽しむことができます。 現代の視聴者は、 物語の主軸を早めに理解してもらわないと飽きてしまいますので、このやり方は非常に効果的です。 ただ、私が展開の作り方の中で、 特に強調したいのは、金持ち一家がキャンプから帰ってくるシーンです。 元々、金持ち一家は、 キャンプで一晩留守にするはずだったのに、電話がかかってきてしまう。 そして、 「あと、あと8分で帰ってくるから、ジャージャー麺を作って」 と金持ち母からオーダーがきます。 元家政婦夫婦と取っ組み合いをしていた、 貧乏家族は大慌て。 ここからのスピード感が面白いです。 父と兄は、 元家政婦夫婦を地下室に押し込め、 妹は、 散らかったリビングを片付け、 母は、 事件性のある家の中で、 黙々と高速でジャージャー麺を作る。 この描写を見たとき、私は感動しました。 飽きが来てしまう中盤で、 緩急の「急」の部分を作って、 視聴者を飽きさせないようにする。 しかも、 「ジャージャー麺早作り」 というコメディー感満載の描写です。 私は、「人を楽しませよう」とする、 監督のエンターテイナーとしての姿勢に感動したのです。 また、ここの視聴者体感としては、 LINEのツムツムのフィーバータイムに近いです。 キタキタキタキタ!!!という風に、 全身が興奮します。 とにかく、テンポアップが気持ち良い。 新海誠作品の「RADWIMPS早送り」より、 よっぽど効果的で、視聴者フレンドリーな演出だと思います。 この素晴らしさから、 私は下記の2点が大事かなと思いました。 テーマの素晴らしさ いよいよ最後です。 ここが本題です。 この構造について、 下記の2点を論じていきます。 幸福感の対照描写 B. 存在の対立描写 3-A. 幸福感の対照描写 金持ち一家、貧乏一家が描かれますが、 貧乏一家が不幸そうか?と言われると、 そうでもありません。 父親はユーモラスですし、 母親は元ハンマー投げ選手で明るいです。 兄は人当たりがよく、知性も高いですし、 妹は器用な性格で、賢いです。 最初の描写でピザの箱作りの内職がありますが、そこからずっと、4人は楽しそうです。 特に、金持ち一家が、 留守にしている間に、勝手にリビングで寛いでる時は、とても楽しそうでした。 生活レベルが低くとも、 幸福レベルが低いわけではありません。 そして、 頭が悪いわけでも、 家事ができない訳でもありません。 能力レベルも低くありません。 むしろ、 金持ち一家に対して、 勉強を教えたり、家事を代行しています。 金持ちに貧乏人が寄生しているのではなく、金持ちは生活を送るために貧乏人に助けられているのです。 貧困層だからといって、 富裕層と比較するために、 過度に不幸のドン底で、無能で、不幸せそう という風に描いていないのが、この映画の特徴です。 貧乏一家は、 ずっと明るく、楽しそうで、前向きです。 3-B. 存在の対立描写 はい、ここです。 この映画が素晴らしいのは、ここです。 この映画では、 3組の家族が存在します。 ・金持ち一家 ・貧乏一家 ・元家政婦貧乏夫妻 しかし、どの家族も、他の家族に対して、 「意識的な否定」は一切していません。 「意識的な否定の不在」を描いている点こそが、この映画の真髄なのです。 また、貧乏一家は、金持ち一家に対して ・あいつらは気にくわない ・金持ちが楽をしやがって という嫌悪感情は一切ありません。 むしろ、母に関しては、 「金持ち母は、金持ちだから優しいの」 とまで言っています。 そして、貧乏一家は、 地下に押し込んだ元家政婦夫婦に対し、 ・食事を持っていかなければと気遣い ・早く地下から出してあげないと と考えています。 一方で、元家政婦夫婦側も、 ・貧乏一家に対し、地下に閉じ込められている夫に食事をあげて欲しい ・金持ち一家の父に感謝と尊敬を示している ・というか、元々家政婦であり協力的 という関係性です。 つまり、 この3組の家族において、 誰も他の人に対して、 「意識的な否定」をしていないのです。 むしろ、言葉にして認めているという点で、 「意識的な肯定」という次元です。 格差社会映画であると、 「上が下を否定し、下が上を否定する」 というのが、明示的に描かれてがちです。 しかし、 否定が明示的に描かれていないのが、 この作品をまろやかに仕立てあげ、 「誰も悪くない中での悲劇」という印象を与えているのです。 悲劇は起こりましたが、 明確な悪者は存在せず、 全登場人物が 「自らの家族を守るための行動」をしている善良な人々なのです。 この家族愛が通底しているからこそ、 この作品は温かく、鑑賞後に胸にジーンとくる映画になっているのです。 悲しみがあるだけで、 怒りや憎しみはないのです。 しかし、 「意識的な否定の不在」と書きましたが、 「無意識的な否定の存在」を忘れてはいけません。 これこそが、 ジョーカーをはじめとする、 昨今の映画のトレンドです。 思いっきりネタバレですが、 貧乏一家の父は、 金持ち一家の父を刺殺します。 金持ち一家の父は、 貧乏一家の父を認めていました。 運転は上手だし、過度に介入しない。 度が過ぎているのは「匂い」だけだと。 たったこれだけ。 たったこれだけの否定が含まれるだけで、 貧乏一家の父親は、自分の存在を否定されていると感じ、金持ち一家の父親を刺殺してしまうのです。 いくら意識的に否定はしていなくても、 本質的には見下している。 そして、 無意識で否定が出てきてしまう。 そして、それが人を傷付けてしまい、 場合によっては、取り返しのつかないことになってしまう。 ジョーカーでは 「無意識の否定」が徹底的に描かれました。 誰しも、 表では肯定して口に出なくても、 本当は否定的である場合、 ぽろっと出てしまうものです。 私は、社会が成熟するにつれて、 多様性理解が進み、「意識的な否定」は徐々に緩和されていると思います。 むしろ、 口だけでは「意識的な肯定」がはびこっています。 しかし、 「無意識の否定」は未だに根強いと思っています。 それは簡単に変えられるものではない。 パラサイトは、 こうした社会の現状を、 エンターテイメント性にくるんで世の中に送り出している点で非常に素晴らしいと思いました。 私史上、最高の映画です。 下記の3つの側面から考えましたが、 改めて素晴らしい作品だと思います。 絵の素晴らしさ 2. 展開の素晴らしさ 3. テーマの素晴らしさ 私の主観に過ぎませんので、 ぜひ他の意見も聞かせてください。 終わり.

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映画『パラサイト

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暗く薄汚い半地下のアパートで暮らす全員失業中の貧困家族。 近隣のパスワードの掛かっていないWi-Fiを使ったり、ピザ屋のピザの箱を組み立てる低賃金の内職をしてなんとか生活していた。 ある日、息子・ギウの友人で名門大学に通うミニョクから、高台の大豪邸に暮らすパク家の娘・ダヘの家庭教師の仕事を引き継ぐ。 そしてギウは、その家に寄生するための「計画」を立てる。 映画『パラサイト 半地下の家族』は 2020年1月10日に公開。 監督はポン・ジュノで、主演はソン・ガンホが務めています。 第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初となるパルム・ドール 最高賞 の受賞を果たし、第92回アカデミー賞では、作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞しました。 長い歴史を誇るアカデミー賞のうち、最も名誉ある作品部門が外国語映画に授与されるのは史上初のことです。 それほどに強いメッセージと衝撃が待っている映画です。 サービス名 配信開始日 視聴方法 2020年6月19日 レンタル 500円 2020年7月3日 ポイント 2020年7月3日 ポイント この中で無料で視聴できるものとなると、U-NEXTの無料配布ポイントを使用して視聴するという方法が一番おすすめなので 無料で視聴したい方は 2020年7月3日まで待ちましょう。 ちょっとお金がかかってしまっても、早く『パラサイト 半地下の家族』を視聴したい。 という方はAmazonプライムがオススメです。 映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ 過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。 そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。 大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。 窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。 電波が悪い。 Wi-Fiも弱い。 水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。 」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。 パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。 この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。 parasite-mv. キム・ギテク — ソン・ガンホ: 半地下住宅に暮らす全員失業中の一家の主。 楽天的な性格。 キム・ギウ — チェ・ウシク : ギテクの息子。 浪人中で、受験経験は豊富だが学歴はない。 キム・ギジョン — パク・ソダム : ギテクの娘。 美大を目指している。 チュンスク — チャン・ヘジン : ギテクの妻。 元ハンマー投げのメダリスト。 パク・ドンイク — イ・ソンギュン : 高台の大豪邸に暮らすIT企業の社長。 ヨンギョ — チョ・ヨジョン : パクの妻。 若く美形だが、騙されやすく能天気な性格をしている。 パク・ダヘ — チョン・ジソ : パクの娘。 高校2年生で、受験勉強に励んでいる。 パク・ダソン — チョン・ヒョンジュン : パクの息子。 幼く落ち着きが無い。 ヨンギョには芸術的才能を見込まれている。 ムングァン — イ・ジョンウン : パク宅の家政婦。 パク一家が入居する以前からの家政婦。 グンセ — パク・ミョンフン : ムングァンの夫。 ミニョク — パク・ソジュン: ギウの友人。 名門大学に通うダヘの元家庭教師。 監督-ポン・ジュノ• 脚本-ポン・ジュノ ハン・ジンウォン• 製作-クァク・シンエ ムン・ヤングォン チャン・ヨンファン• 音楽-チョン・ジェイル• 撮影-ホン・ギョンピョ• 編集-ヤン・ジンモ 映画『パラサイト 半地下の家族』評判・感想【ネタバレなし】 2020年の25本目 『 半地下の家族』 近年のアカデミー賞の選考基準と、僕の映画の好みはあまり合致しないので、アカデミー賞には興味ないけど、ポン・ジュノ監督作品は見たい。 社会問題を風刺しながら、エンタメ要素もあり、狂気も描き、こんな作品が出来上がるなんて。 これは面白い。 観てよかった。 しかし、映画後半には貧富の差を残酷に描写することも忘れておらず、観やすさとメッセージ性がものすごく良いバランスで共存していました。 今や世界の国々で問題となっている「貧富格差」を母国の言葉で発信し、世界中を虜にした歴史的大事件映画です。 映画を観終わったあと、私の頭の中には「彼ら」が住み着いていました。

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【ネタバレ考察】『パラサイト 半地下の家族』ブルジョワは今そこにある危機に気づけないチェ・ブンブンのティーマ

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ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。 映画好きなオトナのお二人が、新作や印象の残る名作について自由に語る対談企画。 今回は昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、2月10日(日本時間)に授賞式があるアカデミー賞に6部門でノミネートされた話題の『パラサイト 半地下の家族』について語ります。 【編集部より】極力ネタばれを避けていますが、若干ストーリーに触れている部分があります。 これから作品を鑑賞される方はご注意ください。 (ストーリー)全員失業中で貧困にあえぎ、臭気漂う「半地下住宅」で暮らすキム一家。 大学受験に失敗したキム家の長男ギウは、ひょんなことから丘の上の豪邸で暮らすパク一家の娘の家庭教師の仕事を得る。 ギウは自分だけでなく家族を呼び寄せて、少しずつパク家に寄生(パラサイト)するプランを実行する……。 公開がはじまったらみんな観(み)にいってたね。 コトブキ 観た人の口コミ効果もすごいですね。 公開されてから、上映する劇場の数も倍になったくらいですから。 カンヌを獲ったり、ほかの賞レースも騒がせてるということで、注目度がグンと増しましたけど、泰造さんも僕も韓国映画が大好きで、ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演とくれば、何もいわれなくても絶対観るタイプの作品じゃないですか。 原田 絶対観る(笑)。 でも、本当に評判がいいから、見る前にハードル上げすぎたらよくないなと思うくらいだった。 それもあって、前半はコメディ要素が強いなって思ったね。 コトブキ ポスターとかのビジュアルだと、もっと不気味なイメージを受けますよね。 でも、ポン・ジュノって本来はコメディの人ですよ。 長編第1作目の『ほえる犬は噛まない』から、コメディというかブラックな笑いが多かったですから。 原田 監督がハリウッド進出してから韓国に戻ってきた作品ということで、原点に戻ったようなタッチになったのかもしれないね。 でも、冒頭から韓国映画の底力を感じたのは「美術」。 あの半地下の家のディテールはすごかったよね。 コトブキ リアルを超えた生々しさでしたね。 室内だけじゃなく、あの家のまわりの町ごと全部セットで作ったそうです。 丘の上の、金持ちの家のほうも。 この作品には、高低差が格差のモチーフとして出てきますよね。 階段とか、坂とか。 そういえば、一緒にアカデミーにノミネートされた『ジョーカー』も、階段が印象的につかわれてましたね。 原田 テーマとしては似ているもんね。 あと、これもアカデミーにノミネートされてる『ジョジョ・ラビット』も似てると思った。 部屋のなかの誰かとか、最後のほうの展開とか。 コトブキ 今回のアカデミーにノミネートされてる作品は、芸術性と娯楽性がどちらも高いものばかりですよね。 ただ『パラサイト』は、その娯楽性のほうでちょっとひっかかってるという人もいるんですよ。 ミステリー風味で緻密に計算されていますけど、展開が突飛じゃないですか。 ファンタジーとまではいかないけど、寓話性が高いというか。 あの階段を降りていくときのドキドキ感はまさに映画的な興奮だった。 コトブキ 予想外な展開で観客の気持ちを揺さぶってくるから、落ち着かないですよね。 突発的なバイオレンス描写もあったりして。 なにが見えてるってわけじゃないんだけど、揺さぶられた。 コトブキ あれは生理的に揺さぶられますね(笑)。 ポン・ジュノは『母なる証明』でも、行為をしてる近くでお母さんが身を潜めてるみたいなシーンがあったので、多分あのシチュエーションが好きなんでしょうね。 原田 そういう意味では、ポン・ジュノは階段から誰かを突き落とすのも好きだし、飛び蹴りも絶対入れてくる(笑)。 コトブキ あとは「ジャージャー麺(めん)」ですね。 あれが出てくると、ポン・ジュノというよりも、韓国映画だなって思います。 原田 韓国映画の食事シーンはどれも印象的だよね。 今回はソン・ガンホたち一家が家主がいない間にぜいたくする場面もよかった。 コトブキ ソン・ガンホの演技はいつもすごいんですけど、今回は本当に素晴らしかったです。 原田 抑えた演技だけど、説得力がすごい。 俺が俺がって前に出てくることはないのに、主演としての存在感があって、何気ない仕草や表情が強烈なんだよね。 コトブキ ソン・ガンホは、現場で自由に、自然体で演じているように見受けられますよね。 でも、聞いた話によると、ソン・ガンホは映画が決まったらアパートにこもってひたすら稽古(けいこ)するらしいんですよ。 それで完全にセリフを入れて、演技プランも完全に作って、現場に臨むけど、本番ではそれを崩して演技するそうです。 原田 いやぁ~! それはすごいな。 コトブキ これ聞いたときには、さすがだな、と。 僕も最近ちょっとだけ役者をやらせてもらうことがあるんですけど、この話を聞いてひたすら稽古しました。 1行しかセリフがなかったんですけど、それを何百回も繰り返して。 だって、ソン・ガンホがやってるんだから! 原田 それは偉いね! 「ソン・ガンホがやってるんだから、俺がやらなくてどうする」ってことだね(笑)。 コトブキ 『殺人の追憶』でも、ラストはソン・ガンホのアップで終わるじゃないですか。 あの表情で、あの映画を全部説明してるんですよね。 原田 真犯人の存在を感じさせているよね。 コトブキ 『殺人の追憶』は実話に基づいていて、あの映画が作られたときは犯人が捕まってなかった。 だからポン・ジュノ監督はソン・ガンホにカメラを見つめさせて、スクリーンの向こう側にいる犯人にメッセージを送ったんですよ。 原田 「俺たちはお前をずっとみているぞ」という意味なんだね。 コトブキ その犯人が2~3年前に逮捕されたんですよ。 監督は接見しに行こうか迷ってるって言ってましたよ。 「お前はどういう気持ちだったんだ」と聞きたいんでしょう。 原田 犯人は映画を観てたの? コトブキ それが観てるらしいんですよ。 刑務所の中で。 原田 それは興味深いね。 実際に犯人に届いてたってことだもんね。 『パラサイト』のクライマックスでも、ソン・ガンホはいろいろ解釈できる表情をしていたよね。 あのシーンは、ソン・ガンホの演技だからこそ考えさせられるし、成立したんだと思う。 ただ、わからなかった部分もある。 動機になりそうなことは少しずつ提示されてるんだけど、意外な結末は、ちょっと唐突というか、あそこまでの行動に出るのかな? と思った。 コトブキ 確かに、意見が割れる所ですね。 原田 ソン・ガンホが演じているから行動に説得力はあるんだけど、ソン・ガンホだからそんなことしなくていいのにっていう気持ちもどっかにあったな。 コトブキ 泰造さん、ソン・ガンホのこと好きすぎですよ(笑)。 原田 あれは韓国の人にはわかる展開なのかな? 文化の違いで、少し納得できなかった部分もあるのかなって思った。 コトブキ 泰造さんの言いたいことはよくわかります。 終盤にある事件が起こって、ラストシーンにつながっていくじゃないですか。 あの結末にしたかったから、その理由付けのためにあの行動を取らせたという可能性もありますよね。 原田 なるほど。 あのエンディングのアイデアを先に思いついちゃったのかもね。 で、そこにつなげる場面を後追いで作っていった。 コトブキ 逆算して作ったシチュエーションかもしれませんね。 この作品には、ほかにも何カ所かそういう「この画を取りたい!」という考えが先行したっぽいシーンがあると思うんですよ。 原田 それがポン・ジュノらしいし、まさに映画ってそういうものだと思う。 コトブキ ただ、お父さんの行動を肯定的に捉えるならば、人間の感情の奥底は、他人が分からない部分にあるという言い方もできる。 例えば「臭い」というのは、そのぐらいグサっとくるものだった。 原田 ああ、それはわかるね。 コトブキ 子どもの時とか、友達に対して「なんかお線香のにおいがするな」とか、無邪気に言っちゃうこととかあるじゃないですか。 でも、言われたほうは一生覚えてるかもしれない。 原田 そういう「臭い」に対する感覚って人間なら誰でも持っているからこそ、この作品が世界中の人にも伝わって、共感されてるのかもしれないね。 ポン・ジュノは、本当はこうなんだけどっていうのをはっきり説明しないで、お客さんに想像させるのがすごく上手いと思う。 コトブキ だから、鑑賞し終わった後でなんとも言えない余韻(よいん)が残るんですよね。 原田 あの裕福な家の子どもたちに何があったのかとか、それぞれの夫婦間の過去とかも、あんまり説明しないで終わっていく。 これは演出上の我慢だと思うんだけど、それをサラっとやってるところもすごくいい。 コトブキ セリフで語らないで、部屋に置いてある本とか、それこそ臭いが漂ってくるようなディテールで説明してるんでしょうね。 あの階段の質感とか、長さとか。 原田 そうそう、あの階段って長いんだよね。 コトブキ あの階段が暗くて長いからこそ、地下への誘惑が増すってことですよね。 あれも深いですよね。 なんだか「一緒に降りて、底辺の現実を見てみますか」と語っているようでした。 原田 見て見ぬ振りをしていたこと、直視してなかったものを目の前に並べていくような作品だよね。 その並べ方や見せ方が独特だし、表現力がすさまじい。 カンヌで賞を取ったのも納得だね。 (文・大谷弦、写真・野呂美帆) <作品情報> 『パラサイト 半地下の家族』 英題:PARASITE/原題:GISAENGCHUNG 監督:ポン・ジュノ 出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン あわせて読みたい.

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